玉響ーTamayuraー

(デジタルハリウッドSTUDIO福岡 CGGYMの卒業制作として制作)

『玉響 — Tamayura —』 は、2分の短編CG映像の中に、“命のいじらしさ”や“潔さ”を込めて制作した個人作品です。
タイトルの「玉響(たまゆら)」とは、“ほんのひととき、かすかに響く”を意味する古語。
この言葉には、古くから「露」や「儚さ」と結びついた、命の一瞬のきらめきを表す情緒があります。

本作では、その一瞬を「もの悲しさ」としてではなく、「健気さ」や「生き切る美しさ」として映像で表現したいと考えました。
現代的なCG技術を用いながらも、精神性や自然観といった“日本的な感覚”をベースにした、内向きで静かな表現を目指しています。

登場するのは、鳥と蛇(の精霊)と、石像の姿で彼らを見守る弁財天。
それぞれが火や水といった自然エレメントをまとい、やがて姿を変えて「玉響」の文字へと融合していく流れは、
「命が形を変えながらも何かに昇華されていく様」を象徴しています。

書道家・陣内雅文氏による「玉響」の揮毫は、別府厳島神社の弁天池の水を使って特別に書いていただいたもの。
水・火・墨・文字といったモチーフを通して、映像全体に“神事的な空気感”をまとわせることを意識しました。

書道家とのコラボレーション

書道家・陣内雅文氏に書いていただいた「玉響」の揮毫をラストシーンで使用。

始まりを“ことば(和歌)”、終わりを“書”で締める構成で、揮毫が映像の余韻となるよう調整。書が単なる飾りにならず、作品の「魂」として機能するよう意識しました。

文字と映像が重なる演出で、神聖な雰囲気を生み出しています。陣内氏の
書は白と黒とことばの世界。世界の最小単位
という言葉に強く共感し、作品の軸に据えました。

エフェクトによる象徴表現の追求

鳥がまとう火の粉、水ににじむ墨、そして鳥や蛇が「玉響」の文字に姿を変えていく演出には、Blenderのジオメトリノードやパーティクルシミュレーションを用いています。(一部Aeのエフェクトも使用。)

蛇と鳥のマテリアルもノードで一から構築。自然のエレメントがもつ“気配”や“ゆらぎ”をCGで再現することで、有機的で象徴性の高い映像を目指しました。技術的表現と精神性の両立を探る試みでもあります。

日本人の視点で、日本人の感覚に根差した映像をつくりたい


日本をテーマにした映像やCG作品では、サイバーパンクやアニメ的なビジュアルが多く見られます。確かに、そういったスタイルは世界中から注目されていて、魅力的であることに間違いはありません。

ですが私は、それとは異なるアプローチとして、“日本人としての内側の感覚”に根ざした映像表現を追求したいと考えています。
古文や仏教・神道、そしてそれらが自然に混ざり合った日本独自の信仰や価値観。そうしたものに、仕事や日常生活の中で多く触れてきました。

CGという技術を通じて、派手ではなくとも、静かに心に残るような日本の美意識を表現し、できれば世界にも届けていきたいと考えています。


◆ 進行管理で意識したこと

”提出期限まで残り2カ月。使う予定のAeとUE5はほぼ未経験。表現したいことを、どんな技法を使えば実現できるのかもわかっていない。”

そんな状況下で「2分の映像作品を2ヶ月で仕上げるのは厳しい」ということはわかっていたので、徹底して締め切りに間に合わせるため、以下のような進行管理を実施しました。

  • Figmaでタスクをすべて洗い出し、週単位のスケジュールを作成、トレーナーと共有
  • 制作フローの可視化(フローチャート管理)
  • 週1回のメンタリングで進捗報告+短期スパンでの目標設定

この結果、無事期限内に完成させることができました。

完成後の講評会ではトレーナーから「働きながらの厳しいスケジュールでも安心して見ていられた」と高評価をいただきました。

figmaを使ったタスク管理と共有

◆ 制作期間・担当範囲

  • 制作期間:2025年1月〜2月末(約2カ月)
  • 制作形式:個人制作
  • 担当範囲:モデリング/マテリアル/アニメーション/エフェクト/コンポジット/進行管理

◆ 使用ツール・素材

  • Blender 4.3(モデリング・エフェクト・レンダリング)
  • After Effects 2025(コンポジット)
  • Photoshop 2025(テクスチャ処理 など)
  • 書道:陣内雅文氏「玉響」
  • 楽曲:SHWフリー音楽素材様「Miyako Japan 4」

◆ 制作中に直面したトラブル

当初はUnreal Engine 5でのレンダリングを想定し、UE5で背景制作を進めていましたが、制作の進行と完成度のバランスを考慮し、途中(残り1カ月時点)でBlenderに切り替えました。

UE5との連携においては、

  • Blenderで作成した動的マテリアルをアニメーションごと移行するのが困難
  • UE5のフォトリアルな背景と、Blenderで表現していた抽象的・象徴的な映像世界の融合が難しかった

といった課題に直面しました。

これらの技術的な問題を踏まえ、「完成を最優先」とする判断のもと、Blenderでの仕上げに方向転換。限られた時間の中で、作品の世界観とクオリティを損なうことなく、無事に完遂することができました。

表現したいビジュアルとツールの特性を見極め、柔軟に最適解を選び取る力も、この制作で得た経験のひとつです。


◆ 得られたスキルと成果

日本的な世界観のビジュアライズ
 古文や信仰を背景にした“内なる日本”を、映像として具現化するアプローチを模索・実践。

映像作品を0から1まで仕上げる力
 初めての映像制作ながら、構想から最終編集まで一人でやり切った経験は、自信につながりました。

進行管理スキル
 Figmaでのタスク整理や週単位のスケジュール設計、面談を活用した短期目標設定により、無理なく確実に制作を進行。

新ツールのキャッチアップ力
 Unreal Engine 5やAfter Effectsなど、初めて扱うツールにも自ら学びながら対応しました。